ファイナルファンタジーVI cefca..3
ガストラ帝国の首都たる「ベクタ」、その中心、鉄板と鉄骨を剥き出しにしてそびえ立つ帝国城に、自然はない。
強いてあげれば、どこかで人口栽培されているのを生けた切花である。
本来なら美しく煌びやかな色彩を放ってその場を和ませるはずのそれらが、異様な雰囲気をかもし出す材料になってしまう、
そんな不自然の中の蟻の巣のような無数の部屋には、常時兵士が詰めて現れるはずもない敵に気を張っている。
果たして敵に気を張っているのか……
それはともかくとして、パラッツォ家の礼服に着替えたケフカは、儀杖兵に導かれて会食の間へと続く階段を上る間、
その兵士達に嫉みの眼でギロギロ睨まれっぱなしだった。
が、ケフカは慣れているようにその目と合うと、肩をすくめて脇を通りぬけ、通りすぎていく。
長い廊下を歩き、赤いじゅうたんに目を落として四つ目のドアをくぐり抜けた。
正面にガストラは鎮座していた。
やはり鉄板むきだしの部屋に不釣合いなシャンデリア、生け花、そして香ばしいパンと見目良い食器が存在している中に、
相変わらず、何枚もなんまいも重ねて膨らんだ、赤と黒、ツートンカラーの服を来た皇帝。
あんまりといえばあまりの光景に、思わず、
”絵画収集が趣味とおっしゃるのだから、飾ってはいかがでしょう?”
と口に出して勧めてしまうところだった。
良く来た、と一言皇帝はいい、御付の青年兵が用意されていたケフカのための椅子をひいて、
ケフカを招くように、こちらをみた。
席につくと、一つグラスに注がれた飲み物が運ばれてきて、食事が始まった。
食器の触れ合う音、咀嚼音、給仕たちの動く気配がだだっ広い部屋に広がる。
靴音は聞こえない。裏に布を打ちつけてあるらしかった。
ケフカは、いつ、そして何の話しを切り出されるのかと気が気でなかった。が、
ガストラは黙々とフォークを、ナイフを口に運ぶばかりで、なかなか話題に入ろうとしない。
目の前の何種類と並んでいるサラダ・ドレッシングに困惑しながら、ケフカは、一対一の対面は初めてだ、とぼんやり考えていた。
いま、ケフカは、正確に言うと、後見人と会食をしているのだ。
皇帝が後見人というのもまた変な感じだ。しかも、一般には知らされていない、ごく一部の人間だけが知る事実。
それはケフカにとってくすぐったく、そしてありがたいことであった。
皇帝のおべっか使いがなにかと自分を利用しようと近づいてくるのが目に見えているからだ。
ちやほやされるのは嫌だった。利用されるのは、もっと。
そして、この食事!!
パラッツォ家は、貴族にしては質素な暮らしをしているほうだった。むしろ庶民に近しい。
父は市井に入った学者、そして軍人だったからだ。
こんな豪華でお上品な朝食を毎日食べていたのでは、感覚が狂いそうだ。
兵舎の荒くれどもの中での食事のほうが、まだ感覚にあっている。
最後の飲み物が差し出されると、それが合図だったようにさっと人が退いた。
ぼうっとしていた身体が知らずに緊張した。
ガストラはその様子でふっと表情を少しだけやわらかくすると「身体の調子はどうだ」と口を開いた。
最初の言葉は意外なものだった。戸惑いながら「すこぶる、良いです」と答える。
「そうか」と頷いて、グラスの中を飲み干した。つられてケフカも口にすると、鼻と舌を苦味が刺激して、
続いて熱いものが食堂を落ちていくのが分かった。
目を白黒させて、非難の勢いで目の前を見ると、皇帝が笑っていた。
「まだ幼かったのだな」
”見れば分かるじゃないか” という反論はもちろん口にしない。
「ケフカ、お前を呼んだのは、魔導研究所の事でだ。魔導研究所はすでに知っておるな」
は、い、と答えながら、ケフカは言われた時の動機が止まらなかった。
”やっぱり魔法となにか関係があることなんだ…でも”
「お前に、魔導研究所の所長補佐を任命する」
ガタッ 椅子が乱暴に揺れた。一気に身体が浮きあがるような感覚の後、
「ぼくが……!?」
「座るが良い」
呆然とたち尽くしている自分に気付き、白い頬を赤らめて、急いで腰を椅子に戻した。
「わしは以前よりあの魔大戦で滅びた魔法に興味を持っておる。あの魔導研究所を設立し、研究もずいぶんと進んでいるのだ。
以前より、彼の所長から優秀な補佐が欲しい、しかも外から、と要求があってな。」
そして、ケフカを選んだ理由として、家柄、知識として申し分ない、しかもこれからの発展性のある若者としてあげた。
それにしてはまあ、幼すぎるがな、という雰囲気がうかがえたが。
そして自分のいかに魔法復活に対して情熱かあるかを雄弁に物語り、ふっと息をついた。
「どのような世界中の知識を集めても、約千年もの間、伝説とされてきたものだ、早々完成するものではない。未だ実験中じゃ……そう、実験中……」
そこで言葉を切り、視線をついっとケフカの青い目と合わせた。
冷たいグレーの光が、心を覗き見るかの……ように、感じた。
また一口、舌を湿し、
「魔導研究所ならそなたの知識が大いに発揮できるであろう。詳しい話は所長のシドに聞くが良い。
行けばすぐ分かる。すぐに研究所に向かうがいい、今すぐに」
「あ、あの」
なんでぼくなんですか。しってるんですか。
「お前の家は代々我が国に仕えて来た学者の家系。その当主はその知識を用い、我等の治世を助けてきた。
現在の当主であるお前は、特に優秀とは聞いておる。期待している」
ケフカが人形のようにかくん、と頷くのを見、口の端を軽く上げて、
「ならば、いずれまた会おう。さがってよい」
突然の尊命に三半規管の感覚を失いながら、ケフカは部屋を退出した。
「こういう事はもしかしたらって、引き取られてからの想像の中にはあった。でもまさかって思ってたのに……”
魔導研究所への道すがら。
案内人の兵士の後をふらふらと、酔っ払いさながら歩いていた。
今まで夢見ておきながら、こそこそとしかできなかった魔法の勉強……開発……それが大っぴらにできる。
しかも最高の環境が与えられて。
転がり込んできた,信じられない幸運。
そう思った興奮で思わず手を握り締めた瞬間に。言葉が、頭に響いた。
「ケフカ。よいか、魔法に知識は身につけてはならないのだ。魔法が滅んだのはそれなりの理由があるからなんだよ……」
眉をきつく寄せて言った父の顔が、脳裏に焼き付いていた……そして、心配そうに頭を撫でる母の顔も。
足が一瞬、止まる。兵士は気付かずに歩いていく。
軽く浮いていた気持ちはどこへやら、ケフカの眉は寄せられ,唇は何時の間にか噛み締められていた。
そう、何回いわれたことか。言われるたびに思っていたものだ。
”なんでさっ、僕、知りたくてたまんないのにっ!”
そう幾度、心の中で叫んだことか。
彼が魔法の事を知ったのは,他の子供の多分にもれず、添い寝する母の夜語りの中でだった。
それが実在していたと知ったのは,父の書斎に放り出してあった本の中からだった。
これは子供心に重大事件であった。物語の中で広がっている世界が本物だったのだ。
「お父さん,ぼく、魔法を復活させてみたいよ!」
この一言が原因だった。不用意にいった言葉だったのだが,父のお説教を散々聞かされた。
しかし父は、先の言葉のように、はっきりと滅んだ原因を語らない。滅んだ意味がわからなくては,このお説教も意味は半減してしまう。
ましてや子供,好奇心旺盛なこの”頭のよい”では済まされぬ頭脳を持った子に対しては,火に油を注ぐようなものだった。
結果,反発心を持ち、魔法の研究書、古文書を内緒で読み漁っていた。
パラッツォ家が所有,管理する図書館は広大で、地上3階から地下は5階まである。
魔法の書,魔大戦以前の書物など貴重書物が収められた最下階は厳重な警備、そして鍵がつけてあった。
更にその鍵は父がいつも持ち歩き,パラッツォ家の当主しか入れない事になっている。
が、侵入者は小さな子供であった。
空気抜きの穴があった。丁度,子供が通れるくらいの穴。
そこから自分で作った小さなカンテラを口にくわえながら入ったのである。
そこには未知の世界。小さな明かりの中に広がったのは,黴臭い「知識」の重なりだった。
開く本ほとんどが現代にはない文字だったが,この時代の本ならば,上の書架にもあるものだ。ケフカは辛抱強く翻訳し,少しづつ読んでいった。
書かれているのは途方もない事ばかりだった。
駄目……到底実現しそうにない……
少しばかりこの世ならぬ炎を発動させる呪文・「ファイア」と呟いてみたが,勿論何も怒るはずがない。
ガストラが魔法に傾倒し始めたと聞いた時は、先を越された悔しさと憧れと、そしてなによりもそれに関わりたい羨望の想いがつのって狂いそうだった。
果たしてどれくらいのものかな……間抜けな科学者ばかりだったら、泣くぞ。
無理矢理考えから父母の顔を引き剥がし、兵士から遅れ気味だった足取りを速めた。
手にびっしょりと、汗を掻いている。
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