ファイナルファンタジーVI cefca...4

 

「お前さんがケフカ=パラッツォか。よー来たな、まあ座れ」

所長室に着くと、十分な躊躇の末に、軽くノックした。

まだ開ききっていないドアの隙間から、いきなり妙なアクセントでこんな緊張感のない台詞が聞こえ,ずっこける思いで中に足を踏み入れる。

ひどい散らかり様だ。書類が散乱している。その奥に黄色い頭巾……と、よく見れば、からだ全体を包むフードを着た普通のおっちゃんが

それを掻き分けていた。紙の山から椅子を見つようとしているようだが,もそもそと動く様子しかこちらからは見えなかった。

椅子がないのにそう言われ,数秒のがさがさという音しか聞こえない沈黙。

「……あの、シド所長……?」

「そうじゃよ、あああった、ほい、ここにな、飲み物はいるかね?」見つけたのを見てほっとしていると、今度は突然奥に引っ込んだ。

取り残される。

アクションがすごく唐突な御仁である。

「あ、いえ結構です……」

「まあそういわんと、ホレ」

ドンッ、とおかれた巨大な木製のカップになみなみ(500ml)とお茶を注がれて、ケフカは素直に困った。

胸に手をやる。実はさっきのアルコールが素人故にまだ残っているのだ。

「わし特製のローズ・ティだ。さあさ、飲んでみ」

そういえば、かすかに薔薇の香りが漂い,なるほど、酒精を落とすには丁度良いかもしれなかった。

「そうそう、若いんじゃからな」

金色の口髭を揺らし,口を大きく奥歯が豪快に見えるまで開けて笑う。

なんだか調子狂っちゃうよなあ。

と思いながら,こくこくっと飲み干した。

満足そうにうなずく様子は、全く街の朗らか豪快おじさんそのものだ。

観察しようにも、本当に見た目のとおりにしか思えない。

「お前さんの事は皇帝からよーく聞いたよ,ああ」恐れ多くも、の言葉に少し眉をしかめたケフカに気付き,またはっはと笑う。

「何,あまり気にせんでくれ。研究者とゆー人種は、常に自分中心とおもっとる者が多い。ココではまあ干渉はあるにしても、

皇帝の意思と言えど細部までは働きにくいのだよ…おっと、皇帝陛下、じゃったな」

にんまりとする。ケフカは”気持ち良く”意地が悪い,とひとこと胸に付け加える。

「しかし、ま、パトロンであるわけだし,全くと言う事はないにしても……おお」

そう言った時、突然ドアが開くと白衣を着た、いかにも学者然とした男が、大量の書類の束を抱えて入って来た。

「所長,これで良いのですか」と差し出した……というよりも、腰を屈めてその束のてっぺんを示したその書類をちらりとみてから、

シドは重々しく頷いて、「うむうむ、それで良い。置いておいてくれ」

がらりと雰囲気が変わる。

男が立ち去ってしまうと唖然としたケフカを見やり「ま、こんなモンさな」という風に肩をすくめて見せた。

見た目だけではない事を示したのである。

(なかなか食えないかも)と、もう一筆加える。

「お前さん速読術は持っておるかな?」

「…ってそれ、まさかそれ、読むんですか? それ全部」

「なーるたけ早くな」ぱちんと片目をつむる。「それで」

またドアが開き、更に書類が増えたのを見たケフカは頭を抱える。

今度は違う男で、無言でドサッと机に置いた。

勢いで紙が舞い,ケフカの足元に滑り込んでくる。

「あ」と声を上げてケフカはそれを取り上げ,男に手渡した。軽く頭を下げるとさっさと出ていこうとする。

と、シドが「待て」と男を引き止めた。

一瞬の沈黙の後,くるっと振り向いた。

男の視線がケフカと正面にあった。顔は細長く、肌の色は浅黒い。深い紺色に見える少し長い髪を軽く前にたらし、後ろをオールバックにしていた。

しかし印象はその眼だった。ガストラに類似するような目だった。突き刺さり,観察するようなその眼で、素早くケフカの全身を見まわしているのが分かる。

キン!と場が張り詰めたのをケフカは肌で感じていた。だが理由を見つける事ができない。

困惑した顔を見て取ったシドは、慌てて声を出した。

「すまんな無愛想で。こっちはテュルク=バランティカ。こっち新入りで、ほら言ってたじゃろ,ケフカ=パラッツォだ。これから一緒にしていく仲間だからな、ま、仲ようやってくれ」

ペコ、とケフカは頭を下げた。テュルクも彼から眼を反らさずに黙礼する。

「では所長。私はこれで」

「あ。あああ、そうか。じゃぁな」

「失礼します」と短く返事をして出ていった。あまりの緊張からの解放に、ケフカは深く溜息をついて,ドサッと椅子に倒れこんだ。

「なんか……どうゆー方なんですか、あの人……」

「うむ、もともとからこの国にいた科学者でな、そうそう、この研究所には帝国出身者はいっぱいおるからな」

わかった、とケフカは頭を振って先を促す。

「本当は、わしもそうなんだが……あいつはたいしたものじゃ、わしの腕になって働いてくれておるが、

本来なら所長の椅子はわしじゃなくて、彼に渡されるべきかも知れぬ……」

「僕は、あなたの方が所長にはいいと思いますね」

ちょっとした嫌悪感から、じっとシドを見つめていうケフカに苦笑しながら、

「まあ、初対面はな。しばらく付き合っておればそんな気も失せるじゃろう。ここで好きなだけ研究に没頭する、そうすれば、ま、いい事とは言わんが,

人間関係も気にならなくなってくるぞ。ん?ん?どうだ」

「……」

そうなら楽なんだけどな。共同作業をするとなるとそうはいかないし……それに、眼。あの眼が,厭だ。鋭く光る,油断のない,あの瞳が。

暗くなったケフカの顔を見て、再びシドは慌ててしまった。こういう時に、この位の子にどう対応すればいいのか、

彼は判らなかった。とにかく、口を開かねば。

「黙りこくらんで……その、なんだ、取り敢えず、部屋を案内させような。おおい! 誰かおらんかー」

 

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