ファイナルファンタジーVI cefca...5

 

ケフカは部屋に入って唖然とした。

所員たちの部屋は、研究所の奥を割り当てられていた。今までいた兵舎とは大違いで、

灰色の石壁でもないし、窓も大きく、明るく広い。

それだけでは普通驚かないだろう。

それはまさに、”彼の部屋”,だったのだ。

信じられない。元の,ガストラに引き取られる前の、屋敷の自分の部屋がそのままでそこにあったのだ。

木材のどっしりとした、彼の年齢にしては大仰だった机、ぎっしりと詰まった巨大な本棚、そしてクローゼット。

カーテンもカーペットも、彼の母が選んだ落ち着いた深い緑色。

木製の壁に飾ってあったチョコボの羽の工作物までがそのままであった。

違うのは、窓の外に広がるのが木立の深い庭ではなく、パイプがあちこちに突き出し鉄骨剥き出しの建設物群だ,ということ。

驚いたか? という風に案内の男がいたずらげに眼を瞬かせた。

「どうして……僕の,僕の部屋だ……」

「皇帝陛下の思し召し、さ。元いた部屋のようなところが一番落ち着くだろうってね。

俺等の部屋も好きなとおりになってるんだぜ。

って、シド所長が進言したことだけどな」

ペロッと男は舌を出した。

多分,中年のマッドサイエンティストしかいないだろうとふんでいたココには似合わない若者(それは自分だって若者、とゆーか、少年だが)だった。

おそらく20代半ばだろう、身体は大きいがヤンチャそうな童顔が好ましく思えた。ケフカから右手を差し出した

「僕,ケフカ=パラッツォ。君は?」

「俺はシヴリース=ロレンツォ。ジドール出身だ。つっても親がだけど」

広い肩とこげ茶の髪を揺すり人懐っこく笑って、ぐっと握り返す。学者の手にしては手の平が大きく,タコがいっぱいできている。

「まあよろしくな、ケフカ! この研究所の人間っつーのはイケスカねぇ奴らばっかりでさ。まともなのはシド所長ぐらいなもんだ、ヤになるね。

変わってるッつっちゃあの人だってそうだけど。でも、お前さんとは気が合いそうだ」

と、碧い目をウインクしてみせた。

ケフカは何だか恥ずかしくなってぱっと手を放すと、気になったことを尋ねた。

「ここじゃどういう事をやってるの?」

「んー、まあいろいろ……設計とか、どっちかっちゅーと技術屋なんだけど……」シヴリースはちょっと眉根を寄せると

「えーっと、予備知識ないと長くなっちまうんだなー、これが……その書類、まず読んでから教えるよ」

机の上に置かれた白い山の現実に引き戻されたケフカはうんざりして口を尖らせてシヴリースを見上げた。

「それ、読まなくちゃいけないのかな……」

「結構すごい内容だぜ。俺ホントびっくりしたものな。魔法のこともだけど,俺としちゃその先だね。

今も建設中のあの建物,あれは工場なんだ。

機械と魔法を融合させようという,その為の」

「えっ!? 何てッ!?」

思いもかけなかった言葉にケフカは思わず大声を出した。窓の外を見、そしてすごい勢いで彼の顔を見上げた。

シヴリースは宥める様にケフカの肩を軽く叩いた。ポンポン,と、2回。くすっと肩を揺らした。

「だから、読めば詳しく判るって。ああそうだ、残ったお前の荷物は、全部兵士が届けてくれると言ってたぞ。

……あーっ、しまった! 姉さん達に洗濯モンのこと頼んどくの忘れてたっ! 締め切り何時だったっけ、12時……って、げっ、後ちょっとじゃねーかよっっ。

男所帯だと部屋が荒れてさー……じゃあなケフカ,またあとでなっ!」

慌しく駆け出していくシヴリースの背中を大声で笑いながら――まだ声変わりはしてなかったので甲高かった――見送って、内側だけ木材になっているドアをぱたんと閉めた。

瞬きを2・3度して,ぐるぐる部屋の中を見て全ての物を確かめると、背中からベッドに飛びこんだ。

ボン,と身体が弾む。じわっと疲れが染み出していく感覚があった。そっと目を閉じて,快いそれが、過ぎるのを待つ。

それにしても、全くいっしょだなんて……否応無しに、父さんや母さんを思い出してしまう。

ほらもう、浮かんできている。

自室のドアを開けると薄いグレーの漆喰,廊下を走ったその突き当たりのそのドアを開ける。

「ケフカ,そんなに乱暴にドアは開けるものではありません」

眉をしかめて叱る母の顔。その様子を、読んでいた本から目を離して微笑んで見ている、父の顔。

全く日常の光景。

すぐにもでてきそうなのに、部屋の様子は同じでももう何もかもが違うようになってしまった。

ありえないけど,たとえあの親族達が僕を引き取ってくれたとしても、それはもはや実現しない遠くの光景なのだ。

そしてここは、父さんも母さんも気に染まないだろう,魔法を研究するところ。

ごめん、なさい。なんであんなに魔法の事に関係しちゃいけないといってたのかよくわからないけど、

でも僕にとってマイナスになる事はないと思うんだ。

ごめんなさい、でも僕は決めた。魔法の研究に打ち込む事を。そこに存在する意味を見つけようとしている事を。

許して、ください。

ゆっくりと息を吸いこんで,鋭くはいた。

そうしないと、今にも身体が震えてきそうだったので。

一しきりそうしていると,兵舎の男達の事も浮かんできた。そしてあの女の子の後ろ姿も……

せりす、だったっけ。もう見れないけど,ま、興味持ってるわけじゃないしね。

そう思う事自体が気にしている事だと人は言うが,ケフカに限ってそんなことはないだろう。

その証拠に,すぐにその後寝込んでしまったのだから。

 

フッ、と、目が覚めた。気が付いてみると窓の外は朱く、

その中にそびえ立つ城からサーチライトが4本、空に向かって舐めるように動いているのが見え始めえていた。

もう夕方か,とふとドアを見やると、あの兵舎に残してきた簡素な私物がちょん、と置いてあった。その上にメモがたたんで置いてあるのを見て、手に取った。

『食事は食堂でめいめい好きな時に食べられるから、好きにするといい。ちなみに俺の部屋はお前の部屋から更に奥の突き当たり手前3番目右手。

何かあったら来いよ。  シヴリース=ロレンツォ 』

折角のシヴリースの好意だったが、あまり腹が減っていなかった。

自分がまだ礼服を着ている(どうりで身体がぎしぎしなのだ)のを見て,急いで鞄の中から普段着を取り出す。

この研究所に規定着みたいなものはあっただろうかと少し悩んだが、結局それを着込んだ。

……ホウッ――儀礼的な服から解放された落ち着いた気分を味わってから、机の上に山積みの、あの書類たちに目をやった。

うー、とこめかみに手をやり,苦虫を百万匹噛み潰したような顔になって,足でトントントンと床を叩き、またウーと唸ってから、昔と変わらぬ机に向かった。

椅子の座り心地も申し分ない。いったいどうしたのだろう。

とりあえず、一番上にある束を手に取った。

少し黄ばんだその束の一番上に、こう書いてあった。

 

   『魔法研究に関する報告書
             シド=デル=マルテ=マルケズ』

 

一ページ目をめくると、細いしっかりした字が連なっている。

ケフカは椅子を引くと、机に足を掛けて、読むことに没頭し始めた。

 

 

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