ファイナルファンタジーVI cefca...6

 

 

パラッツォ一族の図書館に納められている書物等は,魔法力が幻獣から抽出され、それを人間の身体に注入する事によって、

人造魔導士を造り出し,彼等によって魔大戦が熾烈を極めた、と物語風に綴ってあるものだった。

幻獣とは、人間に在らざる姿,人間に在らざる力を持っている異世界からの遭難者だった。

何かの拍子にこの世界に来たのだろうか,それは本当に人間が人間としてある以前からの事だ。

1000年前の魔大戦以前の公式記録がないこの世界、それについての文献も、もちろんない。

結局この世界に迷いこんできた幻獣たちは元の世界に帰ることは果たせず、

この世界に見つけた自分の世界と同じ匂いを持つわずかな土地に人よけの結界を張り、そこに住処を得た。

幻獣界と言う。

住む世界を分か断ったとはいえ、もともと温厚な種族ゆえ、人間とは共存もできた。

だから、自由に、むしろ好んでこの間を行き来し、友好的な関係を結んでいたのだ。

だが仲間を捕縛され利用され虐殺された魔大戦の末、幻獣は自分達と人間は相いれぬものとして、人間界とのわずかな通路に封魔壁と言う強固な壁を造り、

完全に接触を断った。

それが約千年前、それから人間界で幻獣の姿を見ることはなく、魔大戦も風化し、彼等の存在も幻獣界がどこに位置するかも忘れられた。

さらに再び魔大戦が勃発するのを恐れた善良な人々による魔導師の虐殺も手伝い、

魔法は完全に、全世界から消滅したとされている。

今となっては、全てが物語の中にしか存在しない。

 

この古文書のようなものも地下にあったのだが、異国の文字らしく、しかも文が少ししかなかったため、

解読はほんの少ししかできなかった。

もしかしたら、これは九百年くらい前、北方大陸に位置するドマ王国から紛失したという「正伝魔大戦録」ではないかとケフカは思ったが、定かではない。

シドの報告書にはそれら以外にも前置きが長々と書きつねられ、そして書類が3分の1ほど進んだところに

「幻獣から魔法力を抽出する方法が発見された」、と書いてあった。

『発見された! 発見されただって……!?』

脳天を貫く衝撃と悔しさ、そして好奇心からこの文字から目を話せなくなった。

足を机から下ろし、椅子を足で器用に引き寄せると、前のめりになった。

ケフカの目は激しく文字を追いながら、頭ではまた別のことを考えている。口が無意識に声もなく動いた。

『魔法を発見するってことは、まず何よりも、幻獣を捕らえなければならない……封魔壁を見付けたってことか!

……思い当たる事はある、父さんが死ぬ何年か前に少数の軍隊による極秘の出動があった。そしてすぐ後にできた

南方大陸の東半島との境目にある軍の砦。何の為に建設したのかは、全く公表されなかった……

あそこだ、間違いない、あそこが封魔壁がある場所なんだ!!本当に幻獣を捕まえる事ができたの?!

しかも、抽出の方法まで発見されている! 現実に! 物語の中でもなくって、あんな古臭い文献でもなくって、すぐ、そこで!!

いったいどんな手段で、どんな方法で……!!』

ケフカの瞳は、彼の年齢に相応しく、キラキラと輝き始めた。それは、まったく、両親が死んで以来のことだった……

どうやら、幻獣を巨大なカプセルに入れ、ある浸透液に浸すらしい。その中に電波を通すと、魔法力が取り出せると言う事だった。

その複雑な仕組みと実験の方法、それがどこまで進んだかが克明に描かれている。

果たして、これらの事をガストラに見せたところで理解できるかどうかは知れたものではないが、

シドの熱弁は最後まで途切れることなく、夢の実現も近い事を告げ、その文を締めくくっていた。

震えが止まらなかった。最後のページは手の平からにじみ出る汗でしわくちゃになっていた。

そして、やおら立ち上がると、部屋を飛び出した。

サーチライトが貫く空に数え切れぬ星がすでに瞬いて、街の灯もほとんど多くが消えていた。

 

「うむ、抽出にはもう成功してそこまでは確実に進んでいる。」

ケフカの速読とドアを蹴破らんばかりに入って来た勢いと形相に驚きながら、シドはそう答えた。

薄暗いシドの机の周りにはさっき読んだ抽出方法の重要書類ばかりが散らばっている。

こんな無用心も、帝国の鉄壁のガードの中に存在しているという条件に基づいた安心からの好き勝手だ。

無造作に散らばっているようでも持ち主には何の書類がどこにあるのかちゃんと頭にあるらしい。

古めかしいランプの明かりを少し強くすると、ほんの少しの躊躇もなく、現段階の実験経過の報告書(作成中)をひょいっとつかみだした。

「あとはこの取り出した魔法力を人体に投与するだけじゃよ。もうその被験者も決まっておるし。

その者も今日来るはずじゃったがの、まだ来とらん……そう、この仕事から、ケフカ、君に手伝ってもらうぞ。

今日はよく寝ておけ、明日からわしの後にくっついて、しっかりと学んでもらわんといかんからな。

頭がパンクするくらいに色々詰め込んでやるからのー。覚悟しておけ」

ガッハッハッハと高笑いを一しきりかますと、ついとケフカに焦点を合わせた。シリアスな表情。

「見たいか?」

その言葉は目的語が省略されていたが、眼を剥いたケフカはすぐに食いついた。

「そうです幻獣!! 本物の幻獣なんですか!?」

「本物でなければ、わしらの抽出したものはただの変なモノだろーが。」

恥ずかしさに口を抑えて年相応に赤面した少年を見てニヤッと笑い、もう一人の部下を呼ぶために、デスク上のボタンを押した。

「そう、本物さ、さあ見に行こう、その折々、簡単な仕組みを説明しておこう。」

「は……はいっ……」

ほぼ夢見ごこちで、ケフカは黄色いフードの後についていった。そして、またその後から影のようにテュルクが従った。

 

魔導研究所、最深部。

蒼白く光るカプセル――それは本当に巨大で、とても通常のカプセルのイメージについていけない代物だった――の中に、その異形のものはいた。

一匹づつ入れられ、高い筒のようになって天井まで重なっている。

それが歩く通路の両手に聳え立ち、一種、この場が異界の神殿であるかのような雰囲気を醸し出している。

勿論、簡単に触れられないよう、身を乗り出してもカプセルに触れない位置に、手摺が敷いてあった。

初めて見る生物達に、ケフカはカプセルの蒼白い光を顔に受けて呆然と立ち、見惚れていた。

伝説の幻獣……人間のような形態もいれば、獣、魚類の形をしているものもいた。

想像していたような、嘔吐感をもよおすような、つまりモンスターのように醜悪な姿をしているものはいなかった。

ゆらゆらと漂う様は水の中の死体を思い起こさせたが、目を虚ろに開けて身体が時々反り返るので、生きてる事が知れる。

5分ぐらいの沈黙の後、ケフカは口を開いた。

「シ……ド、博士、いったいこれは、どうやって……」

「うむ、皇帝陛下が封魔壁というものを見つけ、その中の幻獣界という異世界に攻め入って捕らえてきたそうじゃ。

まだまだおったそうだが、身分の高いやつが魔法をかけてきて、これ以上は駄目だったそうだ。

しかし、今までこれだけの幻獣から取れた魔法力は微々たるものだ……まあ、何とか人間一人が耐えられると思われる量は取り出せた。

計算と動物を使った実験からの結果だから大丈夫、人体には何ら害のない量のはず。

そして、それが定着したとき、魔法を操る力がつく。伝説が甦るのじゃよ!」

シドは少し興奮気味に言うと、幻獣を見つめた。

「わしは魔法を子供の頃、まあ君もそうだろうが、伝説やお伽話として聞かせられた。

じゃが、それが実際に存在したと知ってから、ただもう科学の道をただひたすら、魔法を復活させるためだけに進んで……

いかんせん、わしの部屋では設備もない、どうやって復活させたらよいのかさえ判らなかった……

そこへ、皇帝から声がかかったのじゃよ。惜しみなく費用は出す、から、魔法を復活させ、それを操る魔導士を完全に甦らせて欲しいとな」

ホウッと息をつく。

「これ以上の魅力的な言葉があるじゃろうか?気兼ねするなど一つとてない、思い描いた通りの完璧な環境……二つ返事で引き受けた」

目を少し眩しそうに細め、幻獣の方を、見た。

そして、解明した、もちろんこれからである事は判りきっている事だが……もうすぐ魔法は復活じゃ。

あと一歩、あの子への魔力定着の実験さえ成功すれば、な」

シドが息をついたところで、ケフカは今気になったことを訊ねてみた。

「”あの子”とは?」

「おお。それを話さねばの」

はっと現実に帰ったばかりの声をして、興奮した科学者はケフカをその場のコントロール部に導いた。

テュルクはそのままついて来る。

ケフカは今では全くこの人物が気になってはいなかった。耳と視界に入ってくる情報の凄まじい奔流に圧倒され、それどころではなかったからだ。

「魔法力を注入するには子供の身体が最適と考えた。細胞レベルへの取り込みも早いし、身体も慣れが必要じゃ。

今の段階では成人に注入すれば、拒絶反応が考えられる。おいおいそれも改善しなければならんが、今はその可能性が高い。

それをガストラ皇帝に提示したら、ある子供を……遣わすので、その子を使うと良いと言って来た。

おっと、君じゃないぞ」あ、と口を開けたケフカに先に釘を刺し,「物心ついた頃から言い聞かせてきたというから、決心もできあがってるらしい」

そんなことってあるのか? とその物言いにちょっと引っかかったが、とりあえず実験には関係ないと判断してケフカはそのまま質問を重ねる事にした。

「どのくらいの子供なんですか?」

「あ〜……5才くらいと言ってたな。どうだ?」

と物静かな男に問い掛ける。男がうなずく。

「幻獣から取り出した力には、古文書にあるように回復、攻撃、間接呪文があるとあるが、」

判ってるかという風に顔を覗き込んだので,ケフカはうなずいて見せた。

「どの呪文が身につくのかは分からん,または、呪文は身につかんかも知れぬ。まだ、その述懐の部分はまだ見つかっておらんで。

だが、”現代最初の魔導士”になるのは確かじゃな……おお、実験の手順も説明しなくてはならないのだな。忙しい忙しい、さあ部屋へ戻ろうか」

シドがコントロール部を離れようと背中を向けたその時、

ケフカはテュルクがチラとみただけでは分からないほど微妙に、薄く笑いを浮かべているような気がした。

思わず怪訝な顔をして見やると、男は彼の視線に気がつき、その眉をしかめて何か、と目で訊いた。

ケフカがプルプルと首を振り返すと、彼はくるりと後ろを向いて歩いていってしまった。

かなりシドから離れてしまった。急いで駆け寄ってコントロール部を出た。幻獣達の柱を一本一本眺めながら歩いていた。

不意に、その中の一際衰弱したような幻獣から目が離せなくなった。別に情けをかけた訳ではないのだが、無性に気になってそのカプセルの前に立ち尽くしていた。

シドが遠くで「どうした?」と振りかえったその途端、その幻獣の目がかっと開きケフカを見据えた……!

えっ? と思わずケフカは後退った。その瞳孔が細い瞳が、更に何か強い感情を込めて、鈍く黄金に輝いた……

シド達は、この小さな少年がなぜその幻獣を見て驚いているのかがわからなかった。

その視線の先のナルシェの吹雪のように蒼く輝く実験動物を見てもなんの変化もなく、ただ静かに目を閉じて浸透液の中に浮かんでいるだけだ。

ケフカは、その瞳の輝きを見たその瞬間、頭の奥から赤い光が充満して全てを支配し始めたような、妙な感覚に陥った。

その光は同時に圧迫感を伴って襲ってきた、それは頭を埋め尽くしても勢いを失わずにケフカの意識野に吹き荒れた。

もう耐えられない!と感じるや否や、フッと糸が切れたかのように意識を失った――身体が前のめりに――寸前、何か、低い哄笑を聞いたような気がしたのだが――

――倒れる――

 

 

 

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