ファイナルファンタジーVI cefca...9
ケフカは部屋のソファに寝そべりながら、書類に目を通していた。
今日の研究経過についての報告書の原案だ。
「これでよし」と呟くと、彼は机に向かって別の紙に清書し始めた。
しばらく書いてふと手を止め、軽くため息をつく。
もう彼がこの研究所に来て4・5年は経っている。おそらくは。
この中に居ると、何時の間にか時が経っている。
空の色と、風、空を飛ぶ鳥や屋上に出た時(滅多にないことだ)の肌を刺激する空気だけが
季節、時の移り変わりを教えてくれた。
もうすでに10代も半ばである。
あの頃から比べるとぼくの背も大きくなったし(それでもまだ160cm台やっとなのが不満だった)、
髪の毛も随分長くなった。
手をやるとおばさん達が切ってやるっ!と、ぐいぐい引っ張っている感触が思い出されて、苦笑する。
「キレイな金髪なのにっ!!おまけに長すぎよっ!」とか言われて強引に2年くらい前か、切ってもらったっきり、
面倒くさくて手をつけていない。前髪もずっと伸ばして少し前に垂らし、残りは全て後ろに持っていって簡素に止めていた。
研究は進み、セリスも自分たちが初歩的な魔法としていた呪文、ケアルやブリザラ等は使いこなしていた。
(それでも、まだ規模はまだまだである)
更に大きな呪文も唱えられたはられたが、精神力が追いつかずにギブアップしてしまう。
それでも、事は順調に進んでいた。
武術の方もかなり上達し、この前は剣士として急成長、将来は必ずやガストラの片腕になるだろうという
レオ、と言う黒人青年に手合わせをしてもらい、とてもご満悦だったらしい。
(ま、レオ青年が手加減してたにきまってるけどサッ、と思うケフカである)
このままいくと、きっと彼女は、昔、魔法と剣、どちらとも精通し得たものだけが名乗ることが出来た
『ルーンナイト』という称号を戴く事が出来るに違いないと関係研究員のもっぱらの見解(下馬評)である。
今、ケフカは高等呪文の解読に必死になっていた。
ほぼ1日中部屋に閉じこもり、古文書を山と積み上げて片っ端から読んでいく、という毎日。
もちろん、シヴリースとの付き合いはずっと続いている。
が、魔導の方はある事情があってひたすら働き詰らしくさすがのかれも疲れが見えていた。
他に、研究所で何か変わった事が、といったら。
ちょっと前に小火があった、春の雷が落ち、一時実験が中止された。
そのくらいの、実に些細な出来事しかなかった。
あとは、実験、解読、報告書・・・・・・
世界も動いていた。
魔大戦の混乱の後、世界が復興していく中で、世界は北・南の大陸に主に9つの地帯が出来ていった。
北の大陸には、西に身分差別の激しい温暖な気候のジドール国。
国土の70%以上が砂漠ながら機械発明の盛んなフィガロ王国。
1年中雪が降りしきる炭鉱自由都市ナルシェ。
北方大陸の貿易自由都市ニケアーム。
東に古い歴史と独特の文化を持つドマ王国。
更にその東に獣が原と呼ばれる辺境地帯がある。
南の大陸には、南に南方大陸の貿易国アルブルグ。
西に風光明媚なマランダ国。
北に小さいが機能的で隅々までいきとどいたツェン国があった。
帝国は軍事国家(もとは世界警察を目指していた)として独立して以来軍備を高め、
約20年前に更に軍備拡大、ついに軍事参謀の息子として生まれたガストラが52歳にして皇帝の座についた。
と同時に、世界に侵略を開始。すでに南方大陸3国を手中に収めつつあるのが今の状態である。
そして現在、ガストラ帝国の手は北方大陸にも伸びようとしていた。
が、マランダやツェン、アルブルクの国は一応抑えているものの、いつ反乱が起きるとも知れない状況にある。
巨大な軍備を持つ帝国も他方に広げすぎ、手に余っている状態がこのところ続いていた。
フィガロとドマは帝国の侵攻に更に警戒を強め、軍備を固めているという報告がなされている。
ナルシェだけはその石炭貿易を盾にされて攻め入る事が出来ず、相互安全保障条約を締結するに至っている。
この研究所内にして、これだけ世界情勢に興味を持っているのは、おそらく自分だけだろう。と思っている。
チョット気分を外へ向けたい時は、国の内政に耳を傾け、政界の動きに目を向けていた。
他のやつらからみると、ぼくは飽きっぽいのかな、とクスと笑う。
しかし、顔はすぐにくもった。
ガストラは、魔導研究所に向かって号令を発した。
急ぎ、魔導を完成させよ・・・・・・!!
魔導・・・・・・か。
彼は息をついた。
この世界は機械技術の発達によって支えられていた。人々はその恩恵に乗っかって暮らしてきた。
その発展が、だからといって、幸せにつながると思うのは過ちだ。
魔導……魔法の力と機械の力の融合……そこから何が生まれてくると思うか?
更なる人類の進歩……確かにこの国の上層部、そしてガストラを何においても崇拝しているものは、そういうだろう。
愚かな!今ここで開発しているのは、明らかに人間を凋落させるもの……
兵器なのだ。
白兵戦に使える巨大な機械、魔法の破壊力を搭載し、その威力を魔法力を注入されていない、
つまり魔導師ではない者でも操れるよう造られたモンスター……!
そう思う。
でも、思うだけ。
学者を、研究員を、一方的に責めるわけにもいかない。
無限蔵の開発費、今まで全く誰も着手など思い及ばなかったその新しい研究に、
惹かれぬ、眼をくらませる事のない学者、技術者がいようか。
要はそのパトロンの使い様だ。と、ケフカは首を振った。
その魔導の機械を使うその様を見てみなければ。
その完成したモノはどのような怪物になるのか。この目で見てみたい、という気がする。
違う、見たいのだ。そして、どんな威力を発揮するのか。その実験動物が……
いや、そうだ、それが殺戮に使われるとは限らないではないか。
しかし。ケフカは分かっていた。分かっていた・・・・・・
そんなような事を考え、この国の軍備についての戦略を自分が軍師になったつもりで遊ばせていたとき。
こんこん。ノックの音が彼の思案を丸めてしまった。
どうぞ、と慇懃に言うと、入ってきたのはテュルクだった。
今だ彼への違和感は、初めて研究所に来た時と変わっていない。ちょっと顔をしかめて(書類の影で!)席をすすめた。
「ここで結構だ。用件だけ。」
「どうしたんだ」 テュルクと話す時は自然と言葉がきつくなる。
しかし彼は無表情のままで気持ちは計りにくい。
「今、皇帝陛下からのお使いが来てな」
ケフカは今自分が手にしていたモノだけにドキッとした。兵士をたぶらかして外と連絡とってるの、バレたかな。が、すぐに。
「君に登城命令がでたそうだ。ああ、すぐではなく1週間後・・・・・・」
と続いたので、心の中だけで安堵した。と、テュルクは突然。
「……身体の具合とか、悪いところがあるか?」
いつものように感情のない声で。
エ?とケフカは思わず、テュルクをまじまじと見つめた。
何の為に、今、そんな事。
「気にしてくれているのか?」
「いや」 テュルクはあっさり言うと手を口に持っていき、しばらく床を眺めていたが、「最近君が変だという噂を耳にしてな。
いきなり人が違ったようになるとかなんとか」
「人が違ったようにだって?」今度こそはっきりと、ケフカは顔をしかめた。
依然として、記憶がなくなるという奇病は治っていなかった。いや、前よりも長い時間になってきているようだった。
人に迷惑はかけていないつもりだったのだけれど……
「本当か?」
「女たちのうわさだから」
「どんなだって?」
「狂ったように笑い出したり、ワケの分からない言葉を発してるとか、そんな具合で」
「――ぼくは覚えがない。」
ケフカは不愉快を全面に押し出してかぶせるように言った。しかし、内心は不安に満ちている。
どういうことだろう……?
「気を悪くするな」 とテュルクは口だけ動かして言った。
「戯言だとわかったのだから、女たちには釘を刺しておく。何なら、君が?」
「いや」
「なら、失礼する。最初の用件を忘れないように。」
ぱたん、とドアが閉まった。
一人ケフカは、膝に頭を押しつけていた。冷たい……顔が、背中が。
ぼくが?気のせいさ。女たちの見間違い。全く、ヤになる……止まれ、冷汗!
それよりもだ、皇帝陛下からの呼び出し……なんだろ。研究所関係のことなら、シド所長に通すはずだし。
声……夢……痛い。痛い、かもしれない。
いたたまれなくなって、ケフカは跳ね上げるようにして椅子を立つと窓を開け、空を見上げた。
今日は霧雨がしとしとと、カーテンのように細く、振っていた。暗いとも明るいとも言い難い、中途半端な空気。
雨に煙る魔導研究所は、もう何千年前に建てられ崩れ落ちた廃墟のように、静かにうずくまっていた。
帝国城につくと、入り口で門番に止められた。
そして、皇帝陛下がパラッツォ家の図書館にて待つようにとの告示があった、と告げた。
「図書館?」 ケフカが鸚鵡返しに言うと
「そうです」と他に答えはないらしく、すました顔をして若い門番は言った。
「あ、そう」ふい、とくるりときびすを返して歩き、顔を見せないようにすると彼は眉根を寄せた。
どうして今更、ぼくんちの図書館になど?????
取り敢えず、いってみるしかない。
帝都ベクタは南方大陸の中心、低い山々に囲まれた盆地に建設された。パラッツォ家の図書館はその北の郊外に構えられている。
歩くと結構な距離だ。しょうがない。
一匹チョコボを借り出してきてまたがった。
ポン、と軽く足を腹にぶつけると、チョコボはその独特の歩調でトットットットッ、と歩き出した。
ぴしっと礼服をつけた人間を乗っけて機能的なベクタの町並みをチョコボが走る様は、なかなかのミスマッチだ。
キャアキャアと子供たちが面白がってついてくる。
おにーちゃん、かっこいーぞぉ!と声がかかる。
くっくと苦笑するとケフカは、どうも、と答えた。
ベクタを出るとかなりの速度を出しても大丈夫だ。
チョコボの頭をスルッと撫でてやる。チョコボはくすぐったそうに目をふるわせると、トトトトトッと走り出した。
その揺れに身を任せながら、彼はさっきの子供たちと昔の自分の姿を思い浮かべ、じっと考えた。
あのくらいだったな。父母が死んですぐにケフカは帝国に引き取られたので、その死後に我が家へ帰るのは久方ぶりの事だったのだ。
彼は、父母の死に顔は見ていない。葬式はモチロン行ったのだが、ケフカが死骸を見る前に棺に釘が打ち付けてあったのだ。
何故? とケフカが蒼白く、涙を必死にこらえた顔で親類を睨むと、伯母にあたる者が、父様の遺言だ、と幼い子に冷たく言い聞かせた。
それは確かに父の筆跡であった。
ひどく、震えた字で。死の予感があったのだろうか?
それなら、何故ぼくに話してくれなかったのだろう。この意地悪い親類どもには残して。
そう思い初のつのって彼は棺の側で脱力し、そのふたつの木箱にずっと身を持たせかけていたのを思い出した。
特別に時刻の予告はしていなかったはずだ。久しぶりに館に行ってみよう。そこで感情に流されてみよう。
多分、誰かが住んで(または荒らして)居るのだろうが、今のぼくには関係ない。皇帝陛下には恐れ多いが、しばしお待ちいただこう。
そうケフカは決めると、明るい陽の光の中で、姿勢を正した。
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